“もったいない”を笑顔に変えるウェブメディア
「アップサイクル トウキョウ」

海ゴミをアップサイクルしたアクセサリーが結ぶ小笠原諸島と都市の『ひとつながり』

今回取材したのは、

すみだ水族館

海ゴミをアップサイクルしたアクセサリーが結ぶ小笠原諸島と都市の『ひとつながり』 海ゴミをアップサイクルしたアクセサリーが結ぶ小笠原諸島と都市の『ひとつながり』

“もったいない”を笑顔に変えるウェブメディアUPCYCLE TOKYOでは、幅広い分野の方々へのインタビューを通して、“もったいない”モノとヒトの新たな出会いや、持続可能な社会の実現に向けた革新的なアイディアが生まれるお手伝いがしたいと考えています。

今回は小笠原諸島の環境保全活動をサポートしているすみだ水族館で、小笠原諸島が抱えている環境問題や、ビーチクリーン活動で回収した海ゴミをアップサイクルして生まれたアクセサリーについてお話を伺いました。

◇お話を伺った方◇

すみだ水族館スタッフ 柿崎さん

すみだ水族館広報 山口さん

2023年にオープンした常設展示「オガサワラベース」

小笠原諸島の美しい自然と、産業観光など人々の暮らしを伝え、未来につなげていくことを目指した新展示「オガサワラベース」

―すみだ水族館と小笠原諸島との出会いを聞かせてください。

柿崎さん:すみだ水族館が開業するにあたって、どんな水族館にするのか、メインを何にするかをみんなで考えていたのですが、開業前の2011年に東京都の小笠原諸島が世界自然遺産に登録されまして。私たちは東京スカイツリー®️という、日本が誇る観光名所と共にある水族館として、東京にもこんなに素晴らしい自然があるのだということを世界に発信したいと考えました。そこから小笠原村と活性化に関わる協定を結び、大水槽を小笠原のシンボルになるように村の方々と協力して作ったのが始まりです。以来10年以上、すみだ水族館では小笠原諸島の魅力を発信し続けています。

―大水槽は小笠原諸島の生き物のみで構成されているのですか?

柿崎さん:そうですね、小笠原村の漁師さんにご協力いただいて実現しました。また、擬岩などの水中の景観は同じく小笠原村のダイビングショップのオーナーさんに監修いただいています。大水槽が完成した際には前村長さんから「これは小笠原の海だね」と太鼓判を押していただきました。

 

すみだ水族館飼育員 柿崎さん

―小笠原諸島をテーマにした新展示が最近公開されたそうですね。

山口さん:2023年9月末に、小笠原諸島のいきものの展示や、産業観光、教育なども含む多面的な情報発信を行う「オガサワラベース」という常設展示ができました。小笠原大水槽と合わせて、これまで以上に小笠原諸島の美しい自然を伝え、未来につなげていくことを目指しています。

―ウミガメの赤ちゃんが気持ちよさそうに泳いでいるのが印象的でした。

山口さん:ウミガメの赤ちゃんは外敵が多く、成体になるまで生き残れる個体はごくわずかだと言われています。すみだ水族館では毎年小笠原諸島で生まれたウミガメの赤ちゃんを約1年間お預かりして、大きくなった子たちを放流するという活動をしています。水槽内のお魚たちも、ウミガメが海に戻ったときに一番最初に会うであろうお魚を集めたり、放流の様子をSNSでライブ配信したりと小さなウミガメの成長をたくさんのお客さまに楽しく見守っていただけるように工夫しています。成長データを発信する装置としてSNSやツールで発信し、見守る仕組みからいのちへの関心を惹き、毎年の放流と迎え入れからは小笠原の自然とつながりを感じてもらう、保全だけでなく小笠原に関心を抱いて頂く大切な存在です。

 

すみだ水族館広報 山口さん

経済の意味でも都市と小笠原をつなぐために、
拾った海ゴミを再生して価値化したものを販売したい

―世界的に環境問題の深刻化が叫ばれていますが、小笠原諸島の現状を聞かせてください。

柿崎さん:世界自然遺産として環境の保護や観光のルールは整備されてはいるものの、外来種の繁栄により在来の生物多様性が脅かされたり、海洋ゴミ問題で海洋生物の暮らしに影響が及ぶなど、様々な問題を抱えています。また、現地の方にお話を聞くとゴミ清掃がすごく大変ということでした。特に船でしか回れない砂浜や離島にゴミが多いようで、シンプルにマンパワーやお金が必要ですし、集めたゴミを処理するのも内地に運ばなきゃいけないですからね。

―砂浜にゴミがあると、生き物にとってどのような影響があるのでしょうか?

柿崎さん:砂浜はウミガメが卵を産みに来る場所ですが、ふ化した子ガメがひっかかって海に戻れなかったり、ゴミが堆積してくると砂浜の温度が上昇してしまいます。ウミガメは性別決定が温度に左右されるので、このままだと生まれてくるウミガメの性別が偏ってしまいます。

ビーチクリーン活動のようす

―それは深刻な影響ですね。小笠原諸島の方々は、海ゴミ問題に対してどのような取り組みをしているのですか?

柿崎さん:小笠原では漁師さんやボランティア団体の方々、地元の学校の生徒たちなど、みなさんがビーチクリーン活動をされていますが、砂浜にあるゴミは小笠原で暮らす方々が出したゴミではなく、海外から漂着したものが多いようです。当たり前のことですが海はつながっているので、世界中の人がゴミを海に捨てないようにしないと永遠に流れてくるので…。海ゴミは大変難しい問題だと思っています。ただ、島の環境や景観を守るためには誰かがやらなければいけないことだと思いますので、私たちすみだ水族館としてもお手伝いしていけたらと考えています。

 

小笠原大水槽の生態系も小笠原の海をモデルにしている

―どうしたら海ゴミが減っていくのか、世界規模で考えないといけない課題なのですね。

柿崎さん:私たちが担う役割の1つは環境と共生する未来へつなぐ地球課題の教育啓蒙を行うことだと思っていて、すみだ水族館の来場者のみなさんに海のゴミ問題について知っていただけたらと考えています。そして、先ほどもお話ししましたが活動を継続するためにはお金とマンパワーがとにかく必要になるので、経済の意味でも都市と小笠原をつなげたらいいなと考えた時に、拾った海ゴミを再生して価値化したものを販売できないかとシツラエさんにご相談しました。シツラエさんとは以前にも水族館で出た廃材を使ってペンギンやチンアナゴのアクセサリーを作っていただいたご縁があったので。

―さまざまな思いが込められた企画なのですね。実際にウミガメのアクセサリーが出来上がった時にはどのような感想を持たれてのでしょうか。

柿崎さん:様々な色の海ゴミが使われたことで、1つ1つ柄が違っているのが面白いと感じました。小笠原の方々にも好評でしたね。

山口さん:私も今までのシリーズより個体差があっていいなと感じました。実際に愛用しているのですが、ピアスが特に好きで重宝しています。今回はネックレスも登場したので、よりたくさんの方につけていただけたら嬉しいですね。

 

アップサイクルで出来上がったアクセサリーは全て模様が違って一点物

適切に捨てること、アップサイクルするための
手立てを考えることが大切

―先ほどお話にも出ましたが、すみだ水族館で“もったいない”と感じるモノはありますか?

柿崎さん:真っ先に思い浮かんだのはアクリル製の消耗品ですね。小さな水槽などは傷ついたり接合部分が寿命を迎えると捨てざるをえないので。あとはクラゲ用のシャーレなどの収容ケースも定期的に入れ替えています。また、館内のサインパネルなども展示が変われば不要になってしまうので…。消耗品は減らすのが難しいのが現状です。ただ、ゴミを減らす=便利なものを使わないということではないと思いますので、適切に捨てること、アップサイクルするための手立てを考えることを大切にしています。

―活動が今後も広がっていくと良いですね。今後の展開として、「こんなアップサイクル製品を作りたい!」などのアイディアがありましたら教えてください。

柿崎さん:来場者のみなさんにどういうものが欲しいのかを聞いてみたいですね。人がたくさんくる場所という水族館の特性を生かして、参加型でできると面白いと思います。

山口さん:今はアクセサリーが多いので文房具などもあるといいなと思います。お子様や普段アクセサリーを着けないという層の方々にも届く商品が生み出せたらと思います。「オガサワラベース」のコンセプトは『ひとつながり』なのですが、まさにアップサイクルもつなげることが大切なので。より多くの方に海洋プラスチックの問題知っていただくきっかけを生み出せれば幸いです。

柿崎さん:購入することで現地に行かなくても応援することができる、そんな仕組みづくりをこれからも進めていきたいと思います。

―貴重なお話、ありがとうございました!

 

この記事に関するお問い合わせ先

すみだ水族館

ウェブサイト https://www.sumida-aquarium.com/

SHITSURAE(シツラエ)- アップサイクルアクセサリー

ウェブサイト https://shitsurae.tokyo/

SUPPORTER サポーター