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アップサイクルという言葉を教えてくれたのは、パリで出会った1枚のハガキだった | UPCYCLE TOKYO(アップサイクル トウキョウ)

“もったいない”を笑顔に変えるウェブメディア
「アップサイクル トウキョウ」

デザイナー

2023.10.20

アップサイクルという言葉を教えてくれたのは、パリで出会った1枚のハガキだった

今回取材したのは、

FEEL GOOD CREATION

アップサイクルという言葉を教えてくれたのは、パリで出会った1枚のハガキだった アップサイクルという言葉を教えてくれたのは、パリで出会った1枚のハガキだった

“もったいない”を笑顔に変えるウェブメディアUPCYCLE TOKYOでは、幅広い分野の方々へのインタビューを通して、“もったいない”モノとヒトの新たな出会いや、持続可能な社会の実現に向けた革新的なアイディアが生まれるお手伝いがしたいと考えています。

今回はCMFデザインの第一人者として長年ご活躍され、グッドデザイン賞の審査員も務めていらっしゃるデザイナーの玉井美由紀さんに、アップサイクルとの出会いや昨今のデザイン業界における環境意識の変化などについてお話を伺いました。

◇お話を伺った方◇

FEEL GOOD CREATION 玉井美由紀さん

FEEL GOOD CREATIONのオフィス

色と素材と表面の仕上げという3つの要素を
幅広い知見をもとにトータルで提案するのがCMFデザイン

―まずは玉井さんの経歴についてお聞かせください。

玉井さん:学生時代は武蔵野美術大学の工芸工業デザイン学科でテキスタイルを専攻していました。卒業後は自動車会社に就職しまして、シートの生地やカラーリング、内外装のテクスチャーなど自動車のあらゆる素材関係のデザインを担当していました。

―かなり特化したジャンルでキャリアをスタートされたのですね。

玉井さん:そうですね、とてもピンポイントな分野でした。仕事をする中で、製品における色や素材はすごく大切な要素で、お客様が選ぶ際の重要なポイントですし、使っている時に心地良さや嬉しさを伝えてくれるものだと感じました。ただ、自動車を作る上では優先順位が低いので、歯がゆい思いもたくさんありましたね。その会社で13年勤めて、担当してきた領域の重要性を世の中にもっと広げていきたいと考えて独立しました。

―その領域を定義したものがCMFという言葉になるのでしょうか?

玉井さん:CMFとは「カラー・マテリアル・フィニッシュ」の頭文字を取ったもので、私自身は退職する数年前に視察で訪れたイタリアで知りました。CMFだけでデザイン事務所もあって、こんなことができるんだ、私もやってみたいと思ったんです。とは言え、日本での認知は全くなかったのでゼロからスタートでしたね。事務所を立ち上げて17年目で、少しずつ日本でも重要性が認知されてきたように思っています。

―逆に海外だとCMFは認知度が高いのでしょうか?

玉井さん:そうですね、海外で何か大きなデザインプロジェクトがあれば、トップのメンバーの中にCMFの専門家が入ることが一般的です。CMFデザインにおいては色と素材と表面の仕上げという3つの要素をトータルで提案するのが主な仕事です。カラーチップで指示して終わりと思われがちですが、そうではないです。色を決める時にマテリアルが入ってくると見え方が変わってきますし、同じ色を指定しても金属とプラスチックでは全然印象が違うなど、素材の情報だけでなくテクスチャーをつけるための加工の情報など幅広い知見が必要となる分野です。

―クライアントにCMFデザインを提案する際にはどのように伝えるのでしょうか?

玉井さん:紙やデータ上の絵だけだと伝わらないので現物で見せる必要があるのですが、色と素材とテクスチャーが合わさったものを見せるのはなかなか難しいのが実情です。プロトタイプみたいなものを作ったりしますが、量産品になると同じ工程は踏めないので微妙に違ってきたり、素材が変わることもあるので。

―デザイン対象はプロダクトが中心ですか?

玉井さん:そうですね。自動車や家電、生活雑貨などのプロダクト系が中心になります。他にも、建築の再開発のディレクションチームの1員として入らせていただくこともありますね。CMFの視点から全体の向かうべき方向性を言葉だけではなく、素材サンプルやカラーパレットなどで共有できるツールを作ったりしています。

 

FEEL GOOD CREATION 玉井美由紀さん

売るのでも捨てるのでもなく
必要としている人にあげることでものを循環させるのがギフトエコノミー

―FEEL GOOD CREATIONで“もったいない”と感じるモノはありますか?

玉井さん:タイルや床材、ガラスなどの素材サンプル、オリジナルで作っているカラーチップ、デザインのヒントとしてストックしている包み紙の切れ端などが山となって溜まっていたり、引越しの度に出るオフィス家具や什器などが不用品としてあって。どうにかできないかと色々調べていたら、海外でギフトエコノミーという考え方があると知りました。売るのでも捨てるのでもなく、必要としている人にあげることでものを循環させるという考え方で、なるほどと思い実践してみました。

―ギフトエコノミーを通して、反響や発見はありましたか?

玉井さん:SNSなどで告知して、会社の入り口やミーティングコーナーにあげるものコーナーを作ってどんどん持っていっていただき、不用品を相当数減らすことができました。印象的だったのはある企業さんが持ち帰ったサンプルを使って子どもたちに向けたワークショップをしてくれたことでしょうか、そういう活動に繋がるのは素晴らしいと感じましたね。その時は溜め込んでいたものを一気に放出したのですが、小出しにやるものではないなと分かったので、イベントのような形で何社か集まってやったら面白いかなと。

―多くの人がつながって行うべき活動なのですね。続いて、アップサイクルについての認識やお好きな製品があれば教えてください。

玉井さん:アップサイクルという言葉を知ったのは2008年にパリのセレクトショップで見つけたハガキでして、「これかわいい!」と手に取ったら「UP CYCLING」と書いてあって。リサイクルじゃなくて価値をアップさせるというのが面白いと感じました。このハガキとの出会いでアップサイクルとリサイクルの違いを知りましたし、 物の価値を高めて循環させるという発想がその当時はなかったので、そういう考え方があるんだと衝撃を受けましたね。それ以来、ずっと大事にして飾っています。ヨーロッパには他にも素敵なアップサイクル製品がたくさんあるのでオススメです。

 

玉井さんがアップサイクルという言葉を知るきっかけになったハガキ

デザイン業界でも再生材の使用が評価され
大きな転換点を迎えている

―昨今の環境問題の深刻化やSDGsが重要視される流れの中で、ご自身として意識の変化などはありますか?

玉井さん:元々環境問題には関心がありましたが、プロダクト系のデザインの仕事をしていて、既存の経済構造や資源のサイクルの仕方について「これで良いのだろうか」と考えさせられる場面がとても増えましたね。それは私だけではなく、多くのデザイナーが葛藤していることだと思います。

―玉井さんは長年グットデザイン賞の審査員を務めていらっしゃいますが、審査員をしていてデザイン業界全体でも変化は感じますか?

玉井さん:そうですね、ここ数年ですけどガラッと流れが変わってきています。わかりやすい例で言うと、2022年は再生材を一部に使ったクリーナーが大賞候補になりました。グットデザイン賞は背景やコンセプト、成り立ちをしっかり見ています。再生材を使うことは見た目の問題だけではなく、調達やコストの問題など様々な困難をクリアしないと出せないので、メーカー側は大変な苦労があったと思いますが、その部分が評価されました。

 

アップサイクルによる素材サンプル

―グットデザイン賞が再生材という部分を評価したことは大きな転換点ですね。

玉井さん:このことがきっかけで他のメーカーさんもかなり意識するようになったように思います。グットデザイン賞としても、環境に配慮したデザインをきちんと評価することは社会貢献の意味でも大きな役割と認識していますし、これからもメッセージを強めていきたいと考えています。

―今後もこの流れが広がっていくと良いですね。さて、今後の展開として「こんなアップサイクル製品を作りたい!」などのアイディアがありましたら教えてください。

玉井さん:製品というわけではないですが、環境問題にフォーカスした取り組みを少しずつ始めています。CMFを専門にやっているので、そこの部分で社会の役に立ちたいと考えて、自社でやるものとみんなでやるもの2つが動いています。1つは循環素材をみなさんに知っていただくという活動で、WEBサイトなどを準備中ですね。もう1つはそもそも循環型社会を達成する上で立ち塞がっている社会構造みたいなものがあると思っていて。今の構造でアップサイクルに取り組んでも、誰かに負担がかかるのが実情ですよね。なので、それを変えるためにインダストリーの真逆でアウトダストリーという概念を作ってバランスをとるプロジェクトを何社か集まってやろうとしています。

―取り組みを進める上で、どのような点がポイントになるのでしょうか?

玉井さん:今、アップサイクルのためだけの技術開発をしている会社はほぼゼロなのですが、アウトダストリーでやりたいのはそこなんです。これだけものづくりが合理化されて安くできるようになっていますから、能力的には絶対にできると思います。そこの部分に現在エネルギーを注げていないのはシンプルに儲からないからなので、それを変えないといけないというのがアウトダストリーの考え方です。モチベーション、思いのある会社さんはたくさんいるのですが、みんなが点の状態なので。その点を集めて、線を通り越して面にできるかがポイントだと思います。前途多難ですが頑張りたいですね。

―貴重なお話、ありがとうございました!

 

オフィスにはさまざまなアップサイクル製品が

この記事に関するお問い合わせ先

FEEL GOOD CREATION

ウェブサイト https://feelgood-c.com/

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